はじめての障害者介助

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トップページ [H]介助と人間関係 > 1. かかわることで知る > 1.2 車椅子の押し方

1.2 車椅子の押し方

 障害者は身体障害者だけではありませんし、また身体障害者にも車椅子を使わない人も多いですが、障害者と聞いてポピュラーなツールのひとつとしてあげられる車椅子の押し方をここで紹介しましょう。何事も実際にやってみることが大事ですし。


1.2.1 車椅子の仕組み

 とりあえずイラストで紹介しましょう。手書きを元に作ってみました。

ごく一般的な車椅子の、各部位の役割

 ハンドルの部分のレバーは、ブレーキのこともありますしリクライニングの調節のこともあります。角度を変えて2つついている場合もあります。車椅子に乗る人に合わせて車椅子の機能や形も大きく違ってくるので、自分がはじめて扱う車椅子は最初に確認しておくとよいです。フットレストはどれくらい前に出ているかも把握しておきましょう。

 車椅子のたたみ方は、座面を両手で山折りに引っ張ってやる形式が多いです。乗る人の障害の種類や度合いによっては、ウレタンなどでできた特殊な座面がついていることもあるので、その場合はたたむ前に取り外します。これらも車椅子によって特性があるので、その都度確認してください。

1.2.2 段差

 車椅子にとってちょっとした段差は大きな障害物となります。そんな段差を通過する方法をイラストで紹介します。

小さな段差をのぼるとき

前輪を上げてから、そのまま進んで前輪を段にのせます | 後輪を段につけたあと、前へ押し出します

 前輪を上げる際には、車椅子の形状や乗っている人の体格によって力が必要な場合もあります。しかしたいていは力の入れる方向などを工夫すると小さな力でうまくいきます。足に体重をかけながらハンドルを後ろに引く(ときには体ごと後ろに落とす)とよいでしょう。

 前輪を上げたまま段のところまで進み、前輪を段にのせます。そしてさらに車椅子をゆっくり前進させて、後輪が段についたところで今度は後輪を段の上に持ち上げます。このときも力がいりますが、無理に上に上げようとは思わず、車椅子を前に進めようとすることで自然に後輪が段にのってくれます。

小さな段差をおりるとき

段差をおりるときは、後ろ向きになる

 上の図のように、後輪から段差をおりるとよいです。

 前向きで段差を降りようとすると、車椅子に乗っている人が座席からずり落ちる危険があります。またベルトなどで固定されていても、上から見下ろす状態 では車椅子の人が不安になります。

 たいていのときは進む先が見えたほうが安心なのですが、段差や坂道などでは後ろ向きのほうが落ち着く場合が多いです。

階段

 小さな段差は、前輪を上げることで越えられるのですが、階段はこの方法では残念ながら難しいです。2〜3段の階段ならば可能ではありますが、かなり危険ですし、技術と体力が必要です。

 そこで、階段を上り下りする際には通行者などに援助を頼みましょう。「この階段を上がりたいのですが手を貸していただけますか」などと声をかけます。

 3人または4人で車椅子を持ち上げ、車椅子を階段の上(山側)に向けて、階段を上り下りします。

車椅子を持ち上げて階段をのぼる [図] i-Ten-Labo(京都市)「車椅子の介助法5」より改変(20070228)

 車椅子を持ち上げているとき、車椅子は水平になっているわけではなく、多少谷側に傾いています。そのため車椅子を谷側に向けていると、乗っている人が座面からずり落ちてしまうので、車椅子の向きには注意しましょう。

 車椅子のブレーキをかけ、車椅子の後ろ側(階段の谷側)に力のある人が立ちます。 上の図では後ろのハンドルを持っているのは1人ですが、ハンドルを片方ずつ2人でもつと安全です。そして車椅子の骨格の部分(ハンドルや車輪を支えているところなど)を持ちます。そして声をかけて持ち上げ、ゆっくりと上り下りします。

 やむを得ず途中でいったん下ろすときは、車椅子が滑り落ちないように注意し、谷側の人はしっかりと支えていましょう。

援助者をつかまえるコツ

 まず、車椅子を持ち上げて運ぶので、力のありそうな人(若い人、男性の人)がよいです。 また、通り過ぎていく人に頼むときはちゃんと目線をあわせてピンポイント攻撃するのがコツです。漫然と視線を泳がせていては誰もつかまりません。目線が合うことで初めて聞く耳をもってくれます。

 なお、援助者をつかまえるのは介助者がするべきか、障害者本人がするべきか、という問題がありますが、ここでは「援助が必要なのは両方だから、ともに協力して援助者をつかまえよう」という結論にしておきます。

車椅子をもつ部分に注意

 車椅子を持ち上げるとき、つい後輪を持ってしまいがちです。ブレーキをしてはいますが動かないわけではありません。車輪が回ってしまって不安定ですので、車輪は持たないようにしましょう。

 またフットレスト(足を置く部分)やアームレスト(ひじ掛けの部分)などは、取り外せるようなつくりになっている場合も多く、安定しません。持つ部分を選ぶときには注意しましょう。

 結局、一概にどこを持てばよいとは言えません。車椅子によって違います。そして車椅子について一番知っているのは、その車椅子に乗っている本人です。どこを持つとよいかは本人に尋ねるのが一番安全でしょう。

1.2.3 車椅子を押すときの注意

 段差を越えるとき、車椅子の前輪を持ち上げますが、そのとき突然持ち上げられると、乗っている人は少しびっくりしてしまいます。なので上げる前に一声かけるのが大事です。

 また、排水溝などの網目状の部分に、車椅子の前輪を落としてしまうことがあります。車椅子の前輪は自転車などのタイヤの幅より小さいことが多く、意外な隙間にも車輪をはさめることがあるので注意しましょう。

 路面が荒れていて車椅子が振動するときは、ウイリーという技術を用いるとよいです。ハンドルをしっかりと握り、前輪を上げた状態で進みます。空気の入ったタイヤの後輪だけが地面に接しているため、地面のでこぼこが車椅子に伝わりにくくなります。この方法は、力があって余裕があるときだけ用いるようにしましょう。

「ウィリー」悪路などでは、前輪を上げながら進みます

 ゆるい坂道では、車椅子を手放さないよう注意します。また急な坂道を下るときは車椅子を坂の上側に向けて、後進します。こうすることによって、乗っている人が前のめりになって車椅子から落ちてしまう危険を避けることができます。

 車椅子を走って押すのはよくないようです。実際に試してみると、振動も激しくなり制御が不安定で乗っている人としては怖いことがわかります。ですから急ぐときも車椅子に乗っている人の様子をみながら押すようにしましょう。

1.2.4 車椅子を押してみよう

 機会があれば車椅子を押してみましょう! ちょっとくらいではあまりよくわかりません。誰かを乗せて、いろんなところを歩いてみたいですね。公園、歩道、近所のお店、デパート、電車、バス…。まずはそんなところで自分が車椅子を押しているのを想像してみてください。自転車とかが多い駅前の歩道ははたして車椅子で通れるでしょうか。エスカレーターはどうやって乗るのでしょうか。改札口はどのように通ればよいでしょうか。

 思い切って実際にその場に行ってみると、なんとかしないといけないので、通りかかった人に手伝ってもらったり駅員さんに聞いてみたりして、なんとかできることが多いです。そうやって試行錯誤しながら車椅子で外を歩くのもおもしろいのではないでしょうか。

1.2.5 車椅子の乗り方

 機会があれば車椅子に乗ってみましょう! 押してみるとわかることもあれば、乗ってみてわかることもあります。日頃よく車椅子を押している人でも、自分で車椅子に乗って他人に押されてみると、いろいろなことを学べるような気がします。

   子どもと同じ目線の高さだ!
   押している人の表情が見えない!
   立っている人たちの会話が、自分の頭上を行き交っていて参加しにくい!

 ほかにも、乗っているのに比例して気づくことがたくさん出てくると思います。ぜひ車椅子に乗ってみてください。

1.2.6 (応用編)電車・バス

 車椅子で移動していると、公共の交通機関を利用することも増えてきます。しかし、電車に乗るには改札を抜けてホームまでたどりつき、さらに電車に乗り込まなくてはなりません。そこでいろいろな知識や技術が必要になってきます。

電車に乗ろう

改札口を抜ける

 最初の難関は改札口です。自動改札は車椅子の幅が確保されていないところが多いです。最近は車椅子が余裕をもって通り抜けられる幅の自動改札も併設されるようになりましたが、従来の幅の自動改札のみの駅もまだまだ多いのが現状です。

 また障害者に介助者がついている場合、障害者手帳を見せると、障害者と介助者あわせて1人分の運賃になります。金額的には子ども用2枚で1人ずつ自動改札を抜けてもいいのですが、駅員さんのいる改札を通るのが無難でしょう。その際に、必要があれば電車へのスロープを用意してもらうよう駅員さんに頼みます。

 なお、車椅子の人は改札口から電車に乗るまで一通りを駅員さんに誘導してもらえます。というか、誘導されます。(これは駅内で事故になった場合に責任が駅に求められる場合があるからのような気がします。)

東京駅、関係者用通路にて [写真] 2006年8月20日、東京駅(東京都)にて

 たとえば赤レンガで有名な東京駅では、乗り換えによってはエレベータやエスカレータが用いられないため(煩雑なため?)、通常一般の人は入れない関係者用通路を誘導されます。

ホームへ行く

 その駅にエレベータがあればよいのですが、経済的な問題や立地上(?)の問題などからエレベータを設置していない駅も多くあります。エレベータはなくても、エスカレータはよくあります。車椅子が使える特別なエスカレータになっている場合が多いです。

 その特別なエレベータというのは、車椅子が乗る部分(3段分くらい)が平らになるんです!

車椅子が使用できるエスカレータ [写真] 2006年8月20日、高尾駅(東京都)にて

 しかしこの操作は駅員にやってもらうので、混雑時はなかなかできません。しかもこの操作の間、ほかの一般乗客者はこのエスカレータを用いることができず、階段を使用することになります。階段を上ることが難しいお年寄りやベビーカー、重いトランクをもった人などはずっと待っていなければなりません。

 車椅子1台が使用するのにかかる時間は、およそ5分くらいです。段が平らになる部分はエスカレータの一部分のみなので、エスカレータを止めてからその箇所まで回すのにしばらくかかります。そして車椅子を載せたあとも、エスカレータは慎重にゆっくりと進むため、あわせると5分くらいかかってしまうのです。なので車椅子が何台もいると全部で何十分もかかります。

 たとえば電車の乗換えで、ただ隣のホームに移りたいだけなのに、一度エスカレータを使って連絡路まで上がらないといけないがため、車椅子3台で20分かかってしまい、目的の電車に間に合わなくて、次の電車が来る別のホームにまた移動する、その間にトイレに行きたくなって改札のある階へ行く、また次の電車に間に合わない、というお笑いのようなことが実際に起こってしまいます。

 なので特に大多数の車椅子で電車を利用する際には、ありえないほどの時間的ゆとりをもって計画してください。

ホームで待つ

 ホームは実は線路側に向かってゆるやかに傾斜しています。雨などがたまらないよう、外に向かって低くなっているのです。この傾斜がくせ者で、車椅子を線路側に向けて止めたとき、ブレーキをかけ忘れていると車椅子が線路の方へ進んでいってしまいます。非常に危険なので、ホームで待つときはブレーキを確認し、車椅子から目を離さないようにする、できればハンドルを持っているくらいの対策が必要です。注意しましょう。

電車に乗り込む

 電車とホームとの間には、意外に大きな隙間があります。ここに車輪が入り込むことはあまりないとは思いますが、車椅子に乗っている人も不安に思うでしょう。駅員さんがスロープを用意してくれることがほとんどなので、スロープを用いて電車に乗り込みます。

 [写真] 2005年8月21日、中央本線にて

 駅員さんを呼ぶのが面倒なとき、あるいは駅員さんがいないときは、上述の「1.2.2 段差」の要領で、前輪を上げて電車に乗り込みます。

電車の中で

 電車の中では、電車の進行方向に対して垂直に車椅子を止めるとよいでしょう。発車・停車のときに車椅子が動いてしまう可能性があるので、進行方向以外の向きにします。

 電車によっては、車椅子を固定する装置が設置されている場合があります。しかし扱いが面倒なことが多く、また時間もかかります。そして適切に扱わないとしっかり固定していないことがあります。なので短時間の乗車では使用することは少ないです。長時間の乗車で、車椅子が動いてしまうのが不安な場合は用いるとよいでしょう。

バスに乗ろう

 バスが車椅子に対応しているかどうかは、地域によって大きく差があります。車椅子でバスに乗るのが当たり前になっている地域もあるようです。

 また運転手さんの対応もまちまちです。乗車するとき運転席から出てきて手伝ってくれる運転手さんもいれば、乗るのをずっと待っている運転手さんもいます。車椅子での乗車を拒否してくる場合もあります。

 必要であれば運転手さんに援助を求めてみましょう。スロープを用意してくれることもありますし、バスからもう1ステップ段差を出してくれることもあります。車椅子では段差を増やしてくれることにあまり意義はないのですが、気持ちだけありがたくいただいて、車椅子を持ち上げるのを協力してもらいましょう。

1.2.7 (発展編)エスカレータ

 車椅子の乗るスペースが平らになるエスカレータについては、上の「1.2.6 電車・バス」で紹介しました。

 ここでは車椅子に対応していない普通のエスカレータでの車椅子の扱いについて説明します。

 これは非常に体力が必要、かつ危険な方法ですので、自信がない場合や車椅子に乗っている本人が不安な場合、車椅子が重い場合は避けましょう。また介助者は1人よりは2人で、後ろだけでなく前からも支えるとよいです。

 車椅子は階段のときと同じように山側に向けます。そして車椅子と一緒にエスカレータに乗ります。するとエスカレータの段が上がってきますね。足を載せているフットレストが段に乗り上がってしまっても気にしません! 後輪の前に段が上がってきたとき、その段と段の間に後輪ががっちりはまるように、車椅子を上へ押し上げます。この姿勢で、エスカレータの終点に着くのをひたすら待ちます。

 この、段が出てくるときが一番ひやひやです。車椅子の長さと段の幅との関係で前輪が段のどこに位置するかが変わってくるので、様子を見ながら(とは言っても一度エスカレータ内に入ると強行してでも最後まで行くしかないのですが)車椅子を支えます。また段の高さが意外に高いとき、あるいは段の幅が足りなくてフットレストが次の段に乗ってしまった場合、車椅子は想像以上の角度になります。車椅子と乗っている人の重さのほとんどが、後ろで支えている介助者にかかってきます。

 エスカレータを出るときは、段差に注意しましょう。終点で安心して、最後の段が隠れていくところの段差で前輪をつまずかせることが多いです。

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はじめての障害者介助http://kaijo.zzkt.com/ 更新2007-02-28 著作者katataka 倫理性ある転載・改変は一定条件下において自由です(詳細)。Page view ページビュー総数 since 2004-10-09T14.

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